夏でも涼しい菅平高原、夫がゴルフだというので、さて私は何をして過ごそうか…
といえば山歩きしかないでしょ!
ちょうどそのゴルフ場を見下ろすような位置に
日本百名山のひとつ四阿山があり、花の山として全国から観光バスも訪れるという根子岳との周回コースは人気があります。
事前に入念に調査して、距離は長いけれど特に危険な箇所もないこと、人気の山でハイカーも多いことから、ソロ登山も大丈夫と判断。
早朝夫をゴルフ場に送り届けて登山口に向かいます。
のどかな牧場を見ながら登山道に入ります。
最初は平坦で、時々沢を渡ったり、篭の登山と似たような雰囲気。
ですが、出てきました、笹藪!
最近よく眺める山歩きサイトの投稿欄にあった「四阿山といえば笹藪がしつこい」との情報。
時には私の背丈ほどもある笹藪が続きます。
それでも登山者が多いので道がわからなくなるほどではないのが救い。
今年はクマの目撃情報が多く、前日にも四阿山付近の笹藪で…とあり、もしや?という思いが頭をよぎり大声で独り言を言ってみたり。
中間地点の「小四阿」になかなか到着しません。空模様は不穏で日差しはほとんどないものの、湿度が高く肌にまとわりつく暑さが続きます。
「私には無理なコースだったのかなぁ」
「小四阿で引き返そうかな」
「いや、せめて四阿山までは行こう」
後ろ向きな発想ばかりが沸いてきます。
道端の可憐な高山植物でさえ写真に撮る余裕もなく励ましになりません。
と、視界が開けると、うっすらとガスの向こうに爆裂火口跡が見えました。
根子岳はその穏やかな全容の一方で爆裂火口跡を有する山です。
四阿山の中腹からよく見えると聞いていましたが、ものすごい迫力で目の前に現れるとテンションが上がります!
「よし!もう一息!」四阿山の山頂も見えてきました。ここまできたら引き返すわけにはいきません。
最後の階段を制覇して無事に登頂。
私のようなのんびりハイカーに「百名山」はあまり縁がないのですが、一応ひとつ制覇ということで記念撮影です。
あ、ここは群馬県なんですね…
ホッと一息、おにぎりをひとつだけ食べます。
ここで悩むのはこのまま同じコースを戻って下山するか、根子岳を周回して降りるか。
時間的にはギリギリ間に合う。
空模様はあやしいけれど、雨雲レーダーでは数時間中に雷雨になるということもなさそう。
となれば、根子岳に向かうことに決定。
逆回りで周回してきたという若い男性に訊ねると、根子岳に向かって降りるところがとても急なので、思いの外時間を取られると考えたほうがいいです、と。
ビビリの小原、慎重にゆっくり、怖かったら尻もちついて降りたらいいわ、と勇気を出して分岐を根子岳方面に。
四阿山からこちらに向かうのは、なんと私ひとり。皆さん、四阿山登山口に向かっています。
ソロ登山の不安とドキドキが大きく膨らんできますが、そんなこと言っていられません。
目の前の急な下りを慎重に進みます。
笹藪と急な下りの繰り返しを何度か過ぎたところ、ハッと足を止めます。
前方に真っ黒なクマが横たわっているではありませんか。
死んでる?寝てる?どうする?引き返す?
とドキドキが最高潮に達した時
上空の雲が晴れて明るい日差しが届きます。
横たわるクマに見えたのは大きな岩でした。
クマが出るかも?と思っているからそう見えたのでしょう。
冷静に!落ち着いて!と自分を励まし、また歩きはじめます。
鞍部まできました。見上げる根子岳の美しいこと。どこまでものどかな笹の原っぱ。
誰もいない。ひとり。嬉しいような怖いような。この風景すべてを独り占め。
あぁ、やはり山はいいなぁ。
振り返ると今降りてきた四阿山山頂が雲に覆われています。
ヤバイ!雨雲がやってくる。
根子岳の登り返しも俄然スピードアップします。
爆裂火口跡の上、大きな岩を巻いて山頂を目指します。途中1組だけ慣れた風の若いペアに追い越されました。
「あれが山頂ですか?」と聞くと
「いえ、あの見えている岩の後側を巻いたらすぐ山頂です」と教えてくださり、これがのちに大変助かりました。この先どう進む?岩を登れと?と迷った時に、すぐに道を見つけることができました。
なんとか雨に降られずに根子岳登頂。
夫からも雨を心配してメッセージが届いていました。麓のゴルフ場から見上げると山頂は雲の中だそうで、さぞかし心配していることでしょう。
すぐに下山開始、根子岳の単調な下りを慎重にひたすら進みます。
少し花を撮る余裕も生まれてきました。
マツムシソウもそろそろ終わりワレモコウが秋の気配を伝えます。
雨やクマが不安で、ろくに休憩も取らず歩いているので、ようやく足の疲れや空腹を感じ始め、歩きながらアンパンをかじります。
まだまだ初心者だなぁ、と反省もしながらも、目の前に広がる風景に心を躍らせ麓を目指しました。
車を止めている駐車場が見えてからが長かったけれど、ようやく登山口に到着。
思わず振り返って根子岳に一礼。
無事に下山できました。ありがとうございました。
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