いつも発表会のたびに素敵な舞台写真を撮影してくださる写真家さん。
うちの発表会は別名「マラソンコンサート」と呼ばれるほど長くて十分な休憩もないので本当に申し訳ないのですが、「まるでコンサートを聴かせていただいているようで撮っていてとても楽しい」と穏やかに笑顔で話される心優しい女性です。
その彼女から渡された一枚の案内状。
お連れ合いのカメラマン、伊藤信彦さんの写真展でした。
帰還困難区域になった東京電力福島第一原発の近隣の村、町を訪れ、撮影を続けています。
私たち家族が暮らす松戸市にも放射能プルームからの降雨により汚染が広がった2011年3月21日。
あの日を境に自然への視点、価値観が激変してしまいました。
いえ、私がそれまで何も知らなかっただけで、原発を取り巻く大きな力は実は何一つ変わってはいないのだけれど。
「安心安全」と信じていた原発が事故を起こすなんて誰もが想像もできなかったといいます。
緑豊かな自然に恵まれた大地が、目に見えない恐ろしい物質に汚染されたなんて、いまだに受け入れることができないでいます。
親しくしているお米屋さんは、飯館村で作られるお米に惚れ込んで取り引きをしていらしたといいます。
遠く九州から米や野菜の取り寄せをしていた知人もいました。
故郷だけでなく仕事まで奪われてしまった人々。
強い思いに突き動かされるように、何かしなければ!ともがきました。でも知れば知るほどその力は大きく途方に暮れました。
真実を追求したくとも、放射能汚染による分断や差別、と世論が思わぬ方向にばかり拡がっていくことに絶望も感じました。
無力感から心身に疲労が重なり体調不良にもなりました。
時が経ち、忘れてはならないこのことを、いつも心のどこかには留めておきながら、日々の雑事に追われて過ごしています。
今回の写真展は、そんな自分を振り返り、反省し、考える機会になりました。
伊藤さんは静かに、しかし力強い意志を持って撮影を続けていくことの大切さを伝えてくれました。
私にできることは、それをさらに誰かに伝えること。
写真展の会期は終わってしまったけれど、伊藤信彦さんの活動をいつも応援したいと思います。
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