ピアノはうたう

ピアニスト小原由起子のブログです。演奏活動やレッスン、日々の暮らしで大切に想っていることを綴っています。

突然のお別れ〜こだまやすしさんを偲ぶ

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こだま登山部を知ったのはラジオの文化放送のある番組企画でした。 (上の写真は番組ホームページより拝借)

 

アナウンサー西川あやのさんが富士山登頂に初チャレンジするという内容に、山に関心があった私はワクワクしながら耳を傾けました。

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富士登山の前に高尾山、八ヶ岳編笠山で足慣らしをしたのも興味深く、いきなり富士山にチャレンジしないで段階を踏むものなのだな〜と感心したものでした。
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練習を重ねた西川アナは荻原次晴さんと番組スタッフと共に登頂を目指します。

その様子は番組の中でライブ中継されドキドキしながら聴いておりました。

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ところが8合目付近だったでしょうか、西川アナが体調不良で思うように進まないとのこと、中継している野村邦丸アナも心配そう。

リスナーからも「西川アナ、どうぞ無理せず」「ここまでよく頑張った」といった投稿が相次ぎ、誰もが西川アナを不安そうに見守る様子が伝わってきます。
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「どうやら高山病のようなので休みながらゆっくりいきます」と次晴さんの報告のあたりで番組が終わってしまいました。

急遽その次の「大竹まことゴールデンラジオ」でも逐次報告、というので私もそのまま聴き続けます。
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西川アナの声も中継され「すみません…気持ち悪くて足がなかなか進みません」と、いつもの元気な西川さんとは別人のよう。

心配で不安で、やっぱり富士山って大変なんだ〜と怖くなりました。

友達も何人も登っていますが、やはり高山病で途中断念する話はよく耳にしていました。
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ところが、です!

「西川アナ、体調復活しまして、いま山頂に向かっています」との次晴さんの明るい声が聞こえたかと思ったら、続いて無事に登頂の知らせが!

しかも「西川アナ、山小屋で元気にカレーうどんを平らげました」というのです。
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登頂できたことよりも、なぜ体調が復活したのか?不思議で仕方がなく、その理由を知りたいとそのまま聴き続けていたところ

「登山ガイドのこだまやすしさんが呼吸のアドバイスをしてくださったところ、劇的に体調が改善、奇跡の復活をしました」というのです!
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呼吸法!呼吸法なんだ!

少し山を歩き始めていて、体力に自信がなくどうしたらバテずに楽しく登れるかを探り始めていた自分にとって、それはまるで天からの声のように聞こえました。
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そして「こだまやすし」さんという登山ガイドの名前を胸に刻みこんだのでした。

https://x.com/kodamatozan/status/1169811484878102529?s=46&t=fT8b3CPxe_vWj9l-4Y3-hQ

(当時のこだまさんのTwitterより)
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お名前で検索をかけたところ「こだま登山部」という少人数制の登山ツアーを主宰していらっしゃることを知りました。

大変興味をそそられて、ホームページを隅から隅までじっくり、しかも何度も読みました。

初心者でも、年齢に関係なく、安全に山を歩いて健康になりましょう、という趣旨が伝わってきました。
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すぐにでも入会してみたい衝動に駆られたのですが「最低でも月2回は山を歩くようにしましょう」というひとことに怖気ついてしまい、実際に参加するまでになんと2年も経過してしまいます。今思うとなぜもっと早くに…と悔やまれます。

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初めて参加したのは2023年2月、東丹沢の仏果山〜経ヶ岳ツアー

丹沢に憧れがあるものの、長い距離を歩き通せる自信がなくて足を踏み出せないでいたのですが、入門編のコースということで勇気を出して参加したのでした。

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そこからはもう、いわゆる「ドはまり」で

来る日も来る日もこだま登山部のツアー予定表と仕事のスケジュールを眺めることになります。

魅力的なツアーがあっても仕事が不規則なためなかなか予定が合わないのです。
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そんな中、まさか自分が歩けるとは思えなかった鳳凰三山にチャレンジ、夢が叶って縦走することができました。

こだまさんのツアーはとてもゆっくり一歩ずつ確実に上がるので、つらい急登も息が切れたりバテることがありません。

少し自信がついた私は次々とチャレンジを続けます。
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還暦を迎え、山を始めたのが遅かったこともあり、どこまで体力が続くかわかりません。

2024は勇気を出して攻めていこう!と決め、4月は甲武信ヶ岳、5月は長沢背稜、6月は八ヶ岳、7月は北アルプス、8月は南アルプス、と予約を入れました。
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もちろんこだまさんには前もって「私でも歩けますか?」と相談し、目指す山に向けてのトレーニングや段階をふむ順番などを教えていただきます。

「あまりのめり込むと体を壊しますよ」

「本業も大事にしてくださいよ」

ニヤリとしながら先日のツアーのあと塩山駅で言われた言葉、

 

 

 

それ、こだまさんが、じゃないですか!
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甲武信ヶ岳ツアーをご一緒した4日後のことでした。

知らない番号からの着信、そしてこだま登山部の部員の方からのLINEで

こだまさんの訃報を知ることになります。
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あまりに突然のことで動揺し、何も手につかなくなりました。

こだまさんがいなくなるなんて。

私はこれからどうしたらいいのだろう。

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5月1日から始まった奈良の大峯奥駈道ツアーの最中、突然倒れて心肺停止となられたそうです。心筋梗塞では、と聞いております。

特に体調不良という様子もなかったそうなので、ご本人が1番びっくりされているかもしれません。
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こだまさんには本当にたくさんのことを教えていただき、大袈裟ではなく人生を変えていただきました。

まだまだこれから…これからこだまさんの背中を追いかけていつまでも山を歩くつもりでいたのに。
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登山ツアーは他にもたくさんあります。

魅力的な山々に案内してくれるガイドさんはいっぱいいるでしょう。

でも、自分なんかがついていけるかわからない、そこが1番不安なのです。f:id:amefuri5kumanoko:20240507212040j:image

こだまさんは、60代でも70代でも、安全に歩けるように寄り添って指導してくださるガイドさんでした。

私より年上の部員もたくさんいらっしゃる。

体調に不安があったり故障があったりしていても、様子を見ながら参加している方も。

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先日のお別れの会では、いつも山装備でしかお会いしたことのない部員の方々と、喪服で顔を合わせることになり

「こだまさんに、どなた?スカートなんか履いていたら誰かわからないですね、なんて言われそうだね」と泣きなが笑い合いました。

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棺の中で眠るこだまさんはすごく小さく見えて私の知っているこだまさんではありません。

でも、祭壇に供えられた登山靴、ストック、ザック、好きだったコーラ、塩ラーメン…を見た時、

現実のものとして迫ってきて涙が込み上げてきました。
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好きだった山の中で

大好きだった大峯奥駈道

亡くなったのだから本望では、という人もいましたが、

奥様や息子さん、お母様に見送られるとは…、どんなにか無念だったことでしょう。
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5月のツアー中止のお知らせをくださった奥様は「こだまは登山部の皆さんのことが大好きで、本当にいつも楽しそうでした」と仰って、

いつもツアーで留守がちだった山男のこだまさん、奥様には心配ばかりおかけしたのでは?とこれは余計なおせっかい。

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この数日間、楽しかった甲武信ヶ岳ツアーのことばかり思い出しています。

こだまさん、美味しそうによもぎ餅もカレーも食べていたのに。

歩く時はとても厳しくて叱られることもありました。ついて行くのに必死だったけれど、教えていただくことをひとつずつ覚えていきました。
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もう、一緒に歩くことはない、そう思うと途端に心細くなってチャレンジしていた夏の予約は宙ぶらりんのままです。

しばらくは考えることもできないかもしれません。
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いつも大きなザックを担いでいたこだまさん、昨年の秋に還暦を迎えられたそうで、なんだ、同じ歳なんだ、と親しみが湧いて、この先もずっと一緒に山を歩けるような気持ちになっていたのでした。
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自分の体力や足の筋力がないこと、目の病気のことなど、自分がいつまで歩けるかわからないという意識はいつもあったけれど、まさか、まさか、こだまさんが先にいってしまうなんて。
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ピアノの師を失うことで、ここまでの喪失感を抱くことはこれまでに一度もありませんでした。

それはすでに師からの教えを元に学びを進めることができるようになっていたからなのかもしれません。

山では私はまだ赤ちゃん同然、歩き方も息の吸い方も水の飲み方も、覚えたばかりなのです。
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山を歩くことがこだまさんへの供養になる、そう言った仲間がいましたが、そう思えるのには少し時間がかかるかもしれません。

いまはただただ感謝と、ご冥福を祈る、それだけです。

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(こだま登山部ホームページより拝借)

#こだま登山部

#こだまやすし